『真夜中の探偵』
- 作者: 有栖川有栖
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/09/15
- メディア: 単行本
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新本格派は死んだ!
…と、ちょっと不謹慎なことを考えてしまったそんな1冊。
前回の『闇の喇叭』の感想も……
>>作中のソラの父親が作者氏に重なって見えて
こうやって探偵=推理小説は滅びていってしまうのか、と場違いな切なさすら感じたりしましたぞ。
…と、ある種予感めいたものを感じていたけれど
今回それが決定的になってしまったなあと嘆息。
個人的な定義ですが“ミステリは世界の謎は解かなくて(解けなくて)良い”と考えているので
大上段振りかぶった“ブラキストン・コンフィデンシャル”が出てきたあたりで
自分の中ではミステリというより“他のジャンル”になってしまったよ…。
ミステリは作中で大規模な事件になったりはしても
究極的には“事件が起きる→謎を解く→犯人とその意図がわかる→関係者が納得する”というミニマムな物語で
社会的な問題を解決するモンではないんじゃないのかなあ。
謎があってモヤっとしている関係者の人生の片隅を解決して
ちょっとだけ生きやすくしてくれればもう充分だと思うの。
世界に立ち向かうのは探偵じゃなくて生身の人間でいいんだよう。
そこまで探偵に求めていないよう、自分の人生くらい自分でなんとかするよう……。
ちょっとしょんぼりしてしまったよ。
ただ読みながら作中に“分促連”という組織が出てきて
それを通じてなんとなく作者氏の言いたいことがわかったような気もします。
結局のところこの作品の世界は日本が分断2つに分断されていたり
その分断、断裂をを過激に推し進めようとする勢力があったりと
逆説的にある種の“分裂”を批判したいのかなあと。
昨今の両極端すぎてブレ幅も大きい世論やら
急激に入れ替わり立ち変わりする政権やら
…枚挙に暇が無いよ。
自分は穏健かつ保守的なタイプの人間だけど
たしかに自分に敵があるとすれば
それは“日本を意図的に割ろうとしているヒト”だなあと思ったり。
……。
久々になんだか頭に重たい感じの読書でした。
まあ、そんなこと考えてぐるぐる読む自分が悪いのだけれど。
有栖川有栖氏は読書経験的に大恩ある作家なので
次回作も(ミステリとしては読めないかもだけど)ちゃんと読んでゆきたいと思います。