『虚空の旅人』

虚空の旅人 (新潮文庫)

虚空の旅人 (新潮文庫)

やっとこ読んだよ、夏文庫枠(というか新潮新刊)!!


今回はバルサ、タンダといった面々はお休みで
主人公はチャグム、星読み導師のシュガもけっこう出てきます。


この二人だけ抜き出すと、単なる主従モノで
十二国記みたいなテイスト*1に思えてきますが


この巻のみどころは舞台になる南海の国サンガルの風土と
そこに暮らす人々、そして華麗に暗躍する姫君たちにあるのかなあと。


ストレートにチャグムの成長モノとしても十分な読み味ですが


海の漂白民の話や、女たちの座の話あたりは
どことなくル=グウィンアースシー世界*2を思わせる趣があります。


他作品と比べるのもちょっとアレですが、ハヤシは
ル=グウィン好きなもので…スンマセン……。


同じ女性作家でファンタジー作品ということもあるでしょうが
あのシリーズにある自由な空気や、広大な世界観を
この“守り人シリーズ”も同様に持っているのだなあと
半ば陶然と作品世界を堪能させていただきました。


ああ、良質のファンタジーってホントすばらしい!!


作者先生いわく「全10巻へと舵を切った物語」とあるように
随所に次回以降からの物語の潮流の種が蒔かれていて
こちらも楽しみな限り。


次の刊行は年末あたりでしょうか?


楽しみに待ちたいものです。

*1:主上(王様)と麒麟(補佐役)的構図

*2:ゲド戦記の舞台