『切れない糸』

切れない糸 (創元クライム・クラブ)

切れない糸 (創元クライム・クラブ)


さてさて、こっちも読んだあと〝おいしそう〟な逸品でございますッ!


『青空の卵』から始まる〝ひきこもり探偵〟三部作で有名な
坂木司の新シリーズでございますッ!


前回は外資系保険会社勤務の主人公が思わぬ人脈から拾ってくる事件を
ひきこもりの探偵役が解決してみせるというお話でしたが…


今回の舞台はクリーニング店でございますッ!


ちょっと地味?と思いきやなかなかどうして奥深いのが
さすが!坂木司というべきか。


大学生活残り僅かでいきなり父が急逝して、家業を継ぐことになった和也が
お客様から預かってくる衣服と一緒に持ち込んだ〝ちょとした謎〟を


近くの喫茶店でバイトしている沢田が解きほぐしてゆく
…といった短編連作形式のお話でございますッ。


相変わらず坂木司調?も健在!


根底にある人に対する〝やさしさ〟が心地よいです


読んでいて、ほっとするカンジ。


もちろんちょっと、はっとさせられるシビアさもそこには混じっているのですが
根本的なところで人に対する目線の優しさが際立っておりまする。


北村薫などもよく〝アットホームな作風〟と称されることがありますが
〝やさしさ〟の表現はこちらのほうが、ハヤシ好みでございますッ。


クリーニング店の面々も、チャーリーズエンジェルばり?のおばちゃん3人組に
ちょい無骨だけど頼りになるアイロン職人シゲさんといい味出してるし


前の短編のゲストが後の短編で脇役に定着して出てくるお馴染みの展開が
さらに心地よく……


そして喫茶店〝ロッキー〟のメニューがおいしそうですッ


前シリーズの鳥井といい、坂木司作品の探偵役は
どうしてこう料理上手なのかッ!


あ、でもこっちの〝フレンチトースト〟は作り方も作中に載ってるし
自分でも作れそうですな。大変ありがたくありがたく…ッ


主人公・和也と探偵役・沢田の絶妙な距離感のある友人関係も素敵だし


いや〜、やっぱりいいなあ!坂木司ッ!!


出版の創元推理社は、講談社ノベルズほど派手さはないけれど
良作ぞろいだし、とくにこれはオススメなので
ぜひぜひ手に取っていただきたい作品でございますッ!


…ハードカバーだけど……。*1

*1:ハヤシも図書館利用だしな