『暁の密使』

暁の密使 (小学館文庫)

暁の密使 (小学館文庫)


おなじみの面白いけど悔しい北森鴻
今回は読むヒト選ぶ作品なのですが…


私にはクリティカルヒットだった!!


ちょっと前に『なぜ絵版師に頼まなかったのか』*1の感想でも触れましたが、


私は常々、歴史小説にはまだまだ新しい可能性があるはずだ!

それは、既に司馬僚太郎、吉川英治ら先人、巨匠に書きつくされた感のある戦国幕末ではなく
むしろ江戸期(町人モノ以外の)や明治期だ、と思っていたのですが


これはまさに、私の求めていた“新しい歴史小説”だっ!!


という逸品でした。

前半は権謀数術渦巻くなかに政治的な思惑も見え隠れする様はコンゲームのようだし
そのなかにも清廉潔白な主人公を配して、こういった作風にありがちな重さを回避する技が光っているし
中半の山岳行の具体的な描写はむしろ山岳小説といった面持ち。


後半、ある登場人物に関連して歴史小説というよりは
ハードボイルドの風味が強くなるので、そのあたりの評価も分かれそうですが
ハード耐性あるなら、それもある種の持ち味に映るはず…。


そしてお話は陶子さんのシリーズに続く、例の伏線をはらんで
一気にラストに……と大満足の内容。


……。


すみません、やっぱり褒めるしかできません!!


ああ、返す返すも作者の急逝が悔やまれてならない!
今私の目の前に神様が現れて「願い事、ひとつどう?」といわれたら
「北森作品をもっと読みたい!」と願ってしまうこと請け合いですッ!


よめば読むほど、もうこれ以上読めなくなる日も近付くのですが
それでも北森鴻はやっぱりやめられない!!