『生物と無生物の間』
今年は新書を精力的に読もう!ということで
新書大賞(…ってあるんだね)とサントリー学芸賞をW受賞した
この一冊に白羽の矢を立てました。
というか身内が買ってきてくれました。アリガトウ!
内容は前半がDNAの発見をめぐる科学者達の数奇なストーリー。
後半は作者氏の専門分野の分子生物学分野の研究から
表題の“生物と無生物の間”=“生命とはいかなるものか?”という問いに
迫る…という2本立て。
前半がこれまたドラマチックで知識がなくともぐいぐい読まされてしまいます。
科学者達の栄光とその影…と申しますか
非常にデリケートかつシビアな世界ですね。
後半はちょっと頭でアレコレとモデル図を組み立てながら
なんとか付いてゆけたか?という具合。
文系で予備知識が乏しいので、ちょっとハードでしたね。
しかし刺激的に楽しめました。
人間の身体では日々さまざまな新陳代謝が行われており
機械ではとてもまねできないほどの複雑な化学変化が起こっている
またそういった膨大な現象の結果として
奇跡的に生命が成り立っている…というのは
イメージとしてなんとなくは、掴んでいるのだけど
分子レベルでそれを解析し“生命”という事象に挑んでゆく
科学者達の執念と努力、発想には感服するしかありません。
そしてそういう目論見すら鮮やかに乗り越え行く
生命のシステムもまたスゴイ。
エピローグは詩的でこれもまた良い幕引きでした。
最後に一文だけ引用
往々にして、発見や発明が、ひらめきにやセレンディピティによってもたらされるというようないい方があるが、わ私はその言説には必ずしも与できない。
むしろ直感は研究の現場では負に作用する。
これはこうに違いない!という直感は、多くの場合、潜在的なバイアスや単純な図式の産物であり、それは自然界本来のあり方とは離れていたり異なったりしている
P56
なんとなく科学分野での進歩は「ニュートンのリンゴ」的な発想が初めにあるような
きがしていましたが、必ずしもそうではない*1のだなあと考えを改めさせられました。
*1:ちゃんとレアケースでひらめき型だった場合も本書には取り上げられていたけれど