『膚の下』
- 作者: 神林長平
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2004/04/23
- メディア: 単行本
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やっとこ読み終わった神林長平の火星三部作・完結編でございますッ!
われらはおまえたちを創った おまえたちはなにを創るのか
神林作品は表紙をめくると、まず一文、出てくるのがお約束ですが
この作品はこれ。
このテーマを徹頭徹尾、680ページ以上かけて追求してゆく様は
まさに圧巻としか言い様がありませぬッ!
神林作品はあらかた読んでますが、〝お気に入り〟*1を別にすれば
まごうことなき集大成、最高峰の一つですな…。
「作者と同時代に生きていて、その作品が読めるのが幸福だ」とすら、
思えてまいります
※実際そのくらい稀有な作家、すさまじい作品ですが
読み終わるのに2週間近くかかってしまいましたが、
正直、3ヶ月ぐらいかけてもっとじっくり読みたかった(笑)
さて、内容はおおまかにいうと
人間の被造物として生まれたアートルーパー(人造人間)である主人公・彗慈が
様々な体験を経て、人間のくびきから逃れ、自立し、
やがては一種の〝創造主〟=神になってゆく過程を描いたものでございます。
彼の決意、そして実行された結果は
他の火星三部作『あなたの魂に安らぎあれ』*2や『帝王の殻』*3に詳しいですな。
〝神の話〟というと大仰で傲慢なテーマと思われるかと存じますが、
そこはストイックな神林作品ッ!
あくまでも主人公の彗慈の心情(というかほとんど内省)に始終して
まったく鼻に付くところがございません。
そもそも〝人間でない生物〟のアイデンティティの成立過程を詳細に描ききるなど人間業とは思えませぬッ!
…おそるべし、おそるべし!神林長平!!
とにかく圧倒的な作品で、上手く感想が書けませぬッ(笑)
終盤は息をつかせぬ展開で、気の抜きどころがないにもかかわらず
しかも華々しい見せ場があるわけでもないのに大感動節でしたぞッ*4
昨年末から火星三部作を飛び飛びで、半年かけて読み継いできたわけですが
読み終えて虚脱感すら感じたり…。
本当にスゴイ作品でした。またしばらく間をおいて再読したいですなッ!
…ところで「これが終わったら神林ストックが終わってしまう…」と思っていたら
実は『鏡像の敵』をまだ読んでないことに気づきました(笑)
そんなわけでまだまだ、神林作品を愛でてゆく所存でございますッ!!
次回更新
明日は、さっき見終わった〝毎日エルガイム劇場〟の最終巻で。
『膚の下』の完璧さと比べると、こっちはえらいグダグダだったなあ
…ちょっと残念だ……。
しかし読了効果で、見ること聞くことやらたらと『膚の下』を思い出して困りまするッ
ゼーガみててもセリフが神林っぽく聞こえてしまうし*5
下手に他の本に手をつけると、比較効果で評価が著しく低くなってしまいそうなので現在、冷却期間中です(笑)
そろそろ、夏の100冊系が各出版社出揃ったので、
そこいらへんからリハビリ始めてゆきたいところですな。
今年もケロロ軍曹ブックカバーで角川を!…と思っていたら
今年のケロロは2種類かよッ!!
……あざとい…あざといよ、角川………。
さて、今日は久々に蛇足をつけたしまする。
情報ソースが特定できなかったので感想に入れなかった
『膚の下』小話でも…興味のある方は下げときますので、ぽちっとプリーズ!
以下蛇足です(『膚の下』エンドロールはこの曲でッ!)
ということで無駄に小話の蛇足でございますッ!
『膚の下』連載中のどっかしらのインタビューで
※家捜しして見つからなかった…どの雑誌だったろう…
「エンドロールに流す曲なら、イエローモンキーの〝SO YOUNG〟という曲が良い」
…とぞ作者氏が言っていたのを覚えていたので、今回、読み終わってから
エンドレスで聞いてみましたが、いや、実に良いですなッ、イエモン!
〝あの日ぼくらが信じたもの それは幻じゃない〟
…という歌詞が良いといった趣旨の発言だったかと記憶しておりますが
ほかの部分もけっこう良いカンジでございます。
よろしかったら読書とあわせてお聞きくださいませ(笑)
*1:『プリズム』と『魂の駆動体』
*2:感想はこちら→http://d.hatena.ne.jp/hayashi-azuma/20051218
*3:感想はこちら→http://d.hatena.ne.jp/hayashi-azuma/20060115
*4:ハヤシは感動性です
*5:世界観的には『魂の駆動体』に近いが…