『あしながおじさん』

あしながおじさん (角川文庫)

あしながおじさん (角川文庫)


今週の名作枠はウェブスターのこの作品です。


世界名作劇場でもおなじみですなッ!


物語、というよりは主人公ジューディーが正体不明の紳士〝あしながおじさん〟に宛てた書簡集の体裁をとっているので読みやすく
ジューディーの快活さやみずみずしさがよく伝わってまいります。


また、書簡の端々に数々の名作の名前が出てきて教養の勉強にもなりますぞ!


…というかちょうど最近読んだ『ハムレット』や『宝島』
読んでないど最近知った『虚栄の市』*1モーリス・メーテルリンク*2に触れられていてちょっと得した気分になったり…。


主人公のジューディーとはなかよくなれそうです(笑)


このジューディーの性格がまた徹底的にオプティミスト
竹を割ったようにきっぱりはっきりしていて
孤児院で育った陰鬱さなんぞはちょっともございませんッ!


   この点はどの人にもあてはまることだとおもいます。


   逆境や悲しみや失意によって、精神力が高められるという説には、私は反対です。
   幸せな人こそ、親切心を溢れるばかりにたたえている人なのです。


   厭世家なんて私は信用しません。


…こんな風に前向きっ娘!


ハヤシ自身も基本的にオプティミストなので、
大いに賛成するところでございます。


さてさて、普通に読んでいてももちろん面白いのですが
有名な作品ゆえのネタバレ前提で読んでいても面白いです。


この作品の場合は〝あしながおじさん〟の正体ですな


…んーネタバレだし一応下げておきますので
OKな方のみクリックプリーズ!!


以下、ネタバレ感想です














そもそもジャーヴィー坊ちゃん、ジューディー好きすぎだって!!



さて〝あしながおじさん〟の正体は、クラスメイトの若い叔父さん*3
ジャーヴィス・ペンドルトン氏=ジャーヴィー坊ちゃんな訳ですが


これを前提で知っていると、書簡の中に出てくる〝ジャーヴィー坊ちゃん〟の言動と
あしながおじさん〟の行動のリンクッぷりが微笑ましくてたまりませぬッ!


ジューディーが書簡で友人サリーの兄の話しをちょこっとして
夏休みをサリー一家と過ごしたいと〝あしながおじさん〟にお伺いをたてれば


〝ダメ!絶対!!〟


…とばかりに返事をよこして、自分に縁のロック・ウィル農園行きを指示。
自分は〝ジャーヴィー坊ちゃん〟としてロックウィル農園に乗り込むという…(笑)


ヨーロッパ旅行を家庭教師バイトを口実に断わられた日には
ついには「あしながおじさんの代理ですッ!」とばかりに説得に来て
ジューディーと大喧嘩を繰り広げたり…ッ


つか、おまえ〝あしながおじさん〟本人だろうがーーーッ!


もうどれだけお茶目さんなんだジャーヴィー坊ちゃん!!


終盤でプロポーズを断わられたショックでカナダに狩に行って
一晩嵐にあって肺炎を起こして生死の境を漂うぐらいになってたり


だああああああ!もうしょがないヤツめッ


そしてハヤシはこういう〝どーしようもないなあ〟な人がツボです。


きっと書簡でライバルの〝ジミー・マックブライド〟の名前が出てくる度に
「ゆるすまじッ…マクブライドとかいうやつ!」と一人ぎりぎりしていたかと思うと
もう、頬が緩むこと緩むこと…ッ


〝萌え〟という言葉の意味がわかった気がいたします


ジューディーもまたいつでも〝あしながおじさん〟の言うことを聞くとは限らず
自由意志を持って行動しているのがツボツボです。


いつの世でも、女性は強くて男性はしょーもないということがあるのですなあ(笑)


純粋に文学として読んでもたいへん素晴らしい作品ですが、
こういう〝裏読み〟もこっそりオススメです。

*1:北村薫の『街の灯』で出てきた

*2:『青い鳥』の作者

*3:…って35才だが