オリエント急行の殺人

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

オリエント急行の殺人 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

舞台はオリエント急行でも、読んだのは中央特快でした(笑)
コミコミで貧血になって倒れかけましたが、なんとか完読。


おそらく読む前にトリックを知っている方が8割以上と思われる名作モノですが
ハヤシも例に漏れず、すでにネタバレ状態であえて読んでみました。


かのルネ・ラリックによる室内装飾とか、豪華な食事の数々とか期待してたんですが
ほとんど描写がなくてちょっと残念……。*1


そのかわりに登場人物で魅せてくれます。

それでも………これはロマンティックな小説になりますね。
あらゆる階層、あらゆる国籍、あらゆる年齢の人々が集まっているのです。


三日間は、この人たち、お互いに赤の他人の人たちが仕方なく一緒に旅をしている。

(中略)

そして、その三日間が終わると、
みんな別れ別れになり、それぞれの道を行き、
おそらく、二度と顔をあわせることはないでしょう。


この言葉のとうりに始まって、紆余曲折あってそして、おそらくその言葉のとうりになるだろうなあというラスト。


なるほどまさに、ドラマチックに仕上がっております。


アガサクリスティーらしく、だんだん色々な人に怪しい点が見つかってゆくおなじみ猜疑心展開(笑)
『ひらいたトランプ』なんかもこの〝片っ端からあやしいよパターン〟ですが、
こちらほど、どぎつい感じがしないのはやっぱり高級列車の一等車両という舞台からかでしょうか。


どの人物にもドラマがあって、過去があって、それが事件に結びついている。
最期にぎゅっと各エピソードを修練してゆくのはさすがです。


とはいえ刊行当時の読者は『アクロイド殺し』と同じくらい、本を床に叩きつけたい気分になったことかと推察されますが(笑)


ネタバレしてても、その雰囲気を味わうために一読の価値ありかと思いまする。


これもオススメ(今回ネタバレありです)





アクロイド殺し』→アガサ系魔球の雄といえば…
『スノウグッピー五條瑛→自分以外のすべての人物が…別名〝胡散臭い宇佐美さんVSいかがわしい江崎〟

*1:車掌…というかホテルマンの仕事ぶりはすごく良かったけど