『なつかしく謎めいて』

なつかしく謎めいて (Modern & classic)

なつかしく謎めいて (Modern & classic)


ゲド戦記』の映画化でも話題のル=グウィンの新作です。


…というか映画化関連で新刊出てたとことに気づきました…orz


それでもル=グウィン好きかい、自分ッ!!


ハヤカワでも、岩波でもないのはけっこう盲点ですね、と、とりあえず言い訳(笑)

不思議な場所の不思議な人たち、
私たちとまったく違っているようで似ている人々は
謎めいているけれど、どこかなつかしい。


SF/ファンタジー界の女王が放つ
思索とユーモアに満ちた新ガリバー旅行記


〜帯より〜


…とまあ、そんな話です。


一応はSFの区切りにわけられるお話ですが、
お馴染みのハイニッシュ・ユニバースではなく、
ちょっと変わった次元旅行という体裁をとっております。


空港での待ち時間がやたらと苦痛なのは、
旅行、とりわけ遠隔地や海外に行く方なら身に覚えのあるところですが(笑)
その不愉快きわまる待ち時間に、
違う次元を旅行してまわる人々のお話でございます。


ル=グウィンの作品というと寓意に満ちて、感慨深い…ありていに言うと
感傷的で難解なイメージがありますが、
これは珍しくたいへんライトな読み味です。


さてさて、各次元のお話で短編一つになっていて
最初の一章がプロローグ、残りの15話を使って様々な次元が登場いたします。


ぜんぶを上げるとキリがないので、
お気に入りをちょこっとチョイスでまいりましょう!

  • 「玉蜀黍の髪の女」

SF色が強く感じられるお話。ゲノムの交雑の悲劇がコミカルでコワイ。

  • 「渡りをする人々」

一番壮大で、感動的。躍動感があるし、「渡り」の習慣?がつぶさに描写されていて
この設定の細やかさがまた秀逸。ラストも良い。

  • 「夜を通る道」

〝闇〟とか〝夜〟とか聞くと、いつもル=グウィンらしいな、と感じますな。
結び間際の夢見の修道女?の言葉がまた、らしくて良いです。

  • 「翼人間の選択」

いかにもファンタジックな話に、現実を持ち込んでいるあたりが巧い。
二人の翼人間の話が対照的で感慨深い。


だいたいこんなあたりですかね。
ハイニッシュ・ユニバース好きとしては、「謎の建築物」もたのしめたし、
「ヴェクシの怒り」は半笑いで見ていたら最後に力技で感動させられました(笑)


んー、でもやっぱり折角のル=グウィン
『オールウェイズ・カミングホーム』ばりとまでは言いませんが、
〝重い〟SFやファンタジー作品が読みたいですね。


正直言うと、せっかく『ゲド〜』映画化のはなしで話題もあるのだし、
おんなじ作者のよしみでハヤカワには絶版になっている
『世界の合言葉は森』あたり、復刊していただきたく(それが、本音か…)*1
あと、サンリオもので絶版してるのをがんばって復刊してほしい…。*2


次回のル=グウィン作品は
年明け第一冊に『ゲド戦記』を再読して見たいと思います。
4巻からこっち未読なのでこの機会に外伝まで一気に読むぞーッ!

*1:図書館等で読んでいるけど、手元に欲しい!

*2:特に『所有せざる人々』と『天のろくろ』は読んではいるけど、やっぱり手元に欲しいッ!