『ロマンシングサガ・ミンストレルソング〜皇帝の華〜』


パッと目につく見せ場はなくとも、ラストシーンに華がありました。


個人的主観ですが良い物語には2つのタイプがあります
ひとつは大局の変化全般が物語の面白さになっているもの*1
もうひとつが前半は簡素であったり難解な内容が続くものの終盤で、あるいはラストシーンで勝負をかけてくるものです*2


この本は、明らかに後者に属しているようです。


主人公はローザ…ということになってますが、
実質はレリア4世が語り手になって、
レリアとローザの半生が綴られていく形になっております。


またこのレリアが幼いころから皇帝に担ぎ出されて
母后の圧倒的な支配にさらされているせいで、
物語の始まる幼年期からなんだか厭世感ただよう子供だったり…


それでもすこしづつ自分の領分を獲得して
長じて、危機奸智能力がずば抜けているのに、
自身に関してはわりとおっとりした
〝やさしい〟皇帝になるわけです。

…護衛の〝華〟の一人から思いを寄せられてもてんで気づかず、
あわや命を失うきっかけとなった人物でも朗らかに送り出してあげたり


ある意味すごい大器といえるかも?


…ゲームの時代のバファル皇帝フェル6世もそうですが
皇帝に覇気がないのはデフォなのだろうか?(笑)
でも彼らのような〝優しい皇帝〟が帝国の寿命を延ばしてきたのかなあとも。


年がら年中、戦塵にまみれて明け暮れる華々しい皇帝もいいですが
たまにはこういう変り種の物語も良いかと存じます。


時代が離れているのでゲーム中の登場人物は多くはありませんが
レリアと詩人との掛け合い形式でお話がすすんでゆくので
詩人さんスキーにはオススメ!


ゲームの設定もうまく活かされていて、
読んでて楽しいシェアードワールドノベルでした。


妹尾女史のほかの作品もよんでみようかな…


以下蛇足です(これもオススメ)

→べに松先生はやっぱ基本かと…

  • 『風の名前』→さっそく妹尾女史借りてきましたッ!

*1:いま読んでいる『コフィン・ダンサー』や『指輪物語』なんかも

*2:中島敦の『光と風と夢』とか、『闇の左手』も面白くなるのは後半